ディオンヌ&フレンズ
「愛のハーモニー」は1985年11月25日にリリースされたというから、阪神タイガースが日本一になった11月2日の熱狂が少し冷めた頃合いになる。当時、私は高校1年生で、洋楽を聴き始めてまだ2~3年というところ。それもテレビで深夜や夕方の再放送に流されていたMTVの切り抜きみたいな番組でヒット曲を聴いていた程度だった。
本曲(原題:That’s What Friends Are For)も、そこで聴いたのが始まりだが、歌っている「ディオンヌ&フレンズ」のメンバー中、知っているのはスティービー・ワンダーとエルトン・ジョンの2人だけで、リーダー?のディオンヌ・ワーウィックとグラディス・ナイトは見たことも聞いたことも無かった。
しかも、スティービー・ワンダーは「心の愛( I Just Called to Say I LoveYou)」、エルトン・ジョンは「サッド・ソングス(Sad Songs (Say So Much))」などを知っているだけで、2人の黄金期を知らないという状態だった。
今ならネットでちょちょいと調べれば分かるところだが、当時は情報源が限られておりディオンヌ・ワーウィックとグラディス・ナイトの経歴を知ったのも、スティービー・ワンダーやエルトン・ジョンの黄金期の素晴らしいアルバム群を聴いたのも随分後の話である。
1986年のNo.1
「愛のハーモニー」は Billboardチャートで4週連続1位となり、さらには1986年の年間チャートでも1位となるほど大ヒットした。ちなみに、2年前の1984年にアグネス・チャンが同じ名前の「愛のハーモニー」を30枚目のシングルとして発売している。こちらがヒットしたかどうかは知らないが「なるほど!ザ・ワールド」のエンディング・テーマに使われたというから、私も聞いたことがあるのかもしれない。
当時も「いい曲だなぁ」と思っていたが、今聴いてもメロディも歌も素晴らしく、ヒットするのも頷ける。ただ、これも当時は知らなかったが元のオリジナルは、1982年に公開された映画のサントラに収録されたロッド・スチュワートのバージョンだという。
曲はバート・バカラック(作曲)と、当時その妻だったキャロル・ベイヤー・セイガー(作詞)による。バート・バカラックと言えばアカデミー賞主題歌賞を受賞した、映画「明日に向って撃て!」の主題歌である「雨にぬれても(Raindrops KeepFallin’ on My Head)」やカーペンターズの「遙かなる影(Close To You)」で有名な稀代のメロディメーカーである。
ディオンヌ・ワーウィックはバート・バカラック作品を多数歌っており、彼女の代表曲の一つである「ウォーク・オン・バイ(Walk On By)」や、「サンホセへの道(DoYou Know The Way To San Jose)」なども、彼の作曲(作詞は両曲ともハル・デヴィッド)による。
ちなみに、私が初めて聴いた「サンホセへの道」は、今や忘れられつつあるバンド「フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド(Frankie Goes To Hollywood)」のヴァージョンで、当時はカヴァーだとは知らなかったが、彼らにしてはいい曲だなぁと思っていたのが、恥ずかしくも懐かしくもある。
いいよ、友達だろ?
「愛のハーモニー」は、米国エイズ研究財団のためのチャリティーシングルとして発売され、300万ドル以上の収益を上げた。これはこの頃に盛んだった1984年のエチオピアの飢饉を機に始まったロック・チャリティーの流れを汲んだもので、1984年のバンド・エイド、1985年のライブ・エイドとUSA・フォー・アフリカの結成など、当時は多くの音楽チャリティーが行われていた。
イギリス・アイルランドのミュージシャンによるチャリティー・プロジェクト「バンド・エイド」から出された「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス(Do They KnowIt’s Christmas?)」(発起人であるボブ・ゲルドフと、ウルトラヴォックスのミッジ・ユーロにより書かれた)も素晴らしく、全英チャート5週連続1位となった。
USA・フォー・アフリカによる「ウィ・アー・ザ・ワールド」(マイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーの共作)も全米チャートで4週連続1位となり、全世界でシングル・アルバム含めて2000万枚以上売れ、ビデオなども含めて6300万ドルの収入となり、その全額が寄付されたという。
音楽の力の強さを物語る話であるが、今も戦争や飢餓で困っている人たちはたくさんおり、同じように世界的な広がりをみせるロック・チャリティーがあればいいと思う。洋楽好きにはスターが一堂に会する滅多にない機会であって、うれしい限りでもある。
「愛のハーモニー」の原題(That’s What Friends Are For)は、何かの手助けをした際の「ありがとう」という言葉に対して使う「いいよ、友達じゃないか?(That’sWhat Friends Are For)」という言葉らしい。それくらいの気さくさでチャリティーができるのも、ロック・チャリティーならではじゃないだろうか。

