西の横綱プリンス
私がプリンスに初めて触れたのは、1985年に発売されたアルバム「Around The World In A Day」だが、それを買おうと思ったのは次作「Parade」からの先行シングル「KISS」のMVを見て衝撃を受け、遡って買ったのが最初である。
このシングル「KISS」は、プリンスの楽曲の中でも評価は高く、アルバム「Parade」は本人をもってして「大失敗だった」という(私は大好きなアルバムだが)なかで「KISS」は殿下も誇りにして気に入っているという。
プリンスの全盛期とはいえ、あのMVでビルボード全米シングルチャートで2週連続1位となっているのは凄い。ちなみに私は当時VHSビデオに録画してMTVなどを見ていたのだが、母親がいる時は恥ずかしくてこの曲は観ることはできなかった。
曲の方は唯一無二というか、おそらくプリンスにしか作れないであろうもので、エッジの効いたギターのカッティング音と艶のあるのファルセットボイス、そして「When Doves Cry(ビートに抱かれて)」と同じ手法になるベースの削除。狂気のMVも含め、初めて聞いた者はとにかく衝撃を受けること間違いない。
当時、洋楽を聞き始めて間もない私は、プリンスのことはその名前と「パープル・レイン」がバカ売れした、ファンキーでちょっとイカレたアーティストというくらいの認識だった。イメージは、東の横綱マイケル・ジャクソンに対する西の横綱プリンスという感じ。
全盛期の5枚
その頃は、ワム!、トンプソン・ツインズ、シンプル・マインズ、ティアーズ・フォー・フィアーズとかビリー・ジョエルあたりのポップな曲をよく聞いており、ブラックミュージックはほとんど聞いていなかった。「スリラー」でさえ聞いてない。
しかし、プリンスの「KISS」を観て、これは聞いてみなきゃいかんと、早速CDを借りに行った。まずは「パープル・レイン」を借りようかなと思っていたのだが、「1999」と「Around The World In A Day」のサイケなジャケットに惹かれた。
両方、何やったら3枚全部借りればと思うのだが、月の小遣いが3,000円程度のバイトもしていない高校生にそんな余裕はない。1枚を厳選して借りなきゃいかんのだ。そこで選んだのが「Around The World In A Day」だった。
「パープル・レイン」は売れすぎたのでいまさら感があり、「1999」のジャケットもいいのだが、目が気持ち悪かった。そんな理由で選んだ「Around The World In A Day」だが、これがまた良かった。当時こればかり聴きまくった。特に極上のポップナンバー「ラズベリー・ベレー」は今でも大好きだ。
その後、「1999」「パープル・レイン」「Parade」そして「サイン・オブ・ザ・タイムス」も聞くことになるのだが、まあ、全部良い。これは説明より何より聴いてみてほしい。ビジュアルなどから避けている人もいるかと思うが、この5枚だけでもぜひ聴いてほしい。
衝撃のジャケット
その全盛期の5枚にひけを取らない隠れた名作が「lovesexy」である。発売直前に販売中止となった「The Black Album」に答える形で、わずか4か月で制作されたというアルバムだが、曲の良し悪しとは違う部分で物議を醸した作品である。
まずはジャケット。「KISS」のMVが恥ずかしいなんていうレベルでなく、発表された1988年当時まだ19歳という私が買うにはハードルが高すぎる逸品であった。全裸の殿下が、とにかく明るい安村のようなポーズで股間を隠している(しかも、多分、履いてないので安心できない。)だけでもおぞましい。
また手で乳首を隠しているのが余計に恥ずかしく、その上、背景を飾るユリ(?)の花のおしべが殿下の方を向いて曲がっている。初見では素直に「ええんか、これ?」と思った。まあ、一度検索でもして見てもらうと分かるのだが、これは物議を呼ぶどうこうじゃなく「これでは買えない」というレベルのシロモノである。
もちろん、私は勇気を持ってレジに持って行ったが、ヘビメタで挟んで買ったような記憶がある。AVじゃあるまいし。それに加えて、殿下の意向でアルバム通して1曲とされており、スキップして聞くことができない仕様となっていた。
もはや、買えないよう売れないようにした仕様にしか思えない。当時のドイツ版とか、今出ているCDはスキップできるようだが。最初は「良作」程度の感想で、プリンス作品の中ではあまり聴いていなかった作品だった。
だが、3年前ほどに久しぶりに聞いてみようとかけてみたら(もちろん、CDじゃなくApple Music)とても良く、その日からしばらくは毎日のように聴いていた。とくにアルバム名ともなっている「lovesexy」という曲がいい。
「lovesexy」を是非!
プリンスと言う人はとにかく才能がありすぎて、多種多様なアルバムを作っているからか、個人で立ち上げているブログなどのアルバムベスト5とかベスト10をみると、かなりバラバラになっている。いくら多作だとしても、ベスト5のうち3つくらいは普通のアーティストならだいたい同じものになる。
しかし、プリンスの場合はかろうじて「サイン・オブ・ザ・タイムス」がどのベストにも入ってくるだけで、ばらつきが酷い。ベスト5や10でなく、1枚選ぶとしたら。という場合もかなりばらつきがある。
最も売れた「パープル・レイン」だけ取っても、ベストにする人から、ベスト10にも入れない人までいる。ちなみにこの「lovesexy」もベストにする人もいれば、ランク外にする人もいる。
なお、私のベストは「1999」か「Parade」なのだが、僅差で「1999」か。アルバムもいいが、タイトル曲の「1999」は、私のテーマソングというくらい好きで、生まれてから最も多い回数聴いた曲だと思う。
最後になるが、ちょっと人を選ぶ気もするが、この「lovesexy」、特にジャケットで避けていたという人には是非聴いてほしい。

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