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歳を取るのも悪くないと思った。トム・ペティとルイジアナ・レイン

洋楽

歳を取ってから聴くと良い

いわゆる名盤という評判を受けて、CDを買って聴いたものの、聴いてみたらイマイチだったというアルバムはいくつかある。その最大のものは、名盤中の名盤と言われるビーチ・ボーイズのペット・サウンズで、「いつか俺にも分かるかも」と定期的に聴いてみているが、今でもピンとこない。

一方で、若い頃はいいと感じなかったが、歳を取ってから聴くと良いと感じるアルバムやアーティストもある。今、最もそれを感じるのがトム・ペティである。そもそも日本ではあまり人気もなく、知名度も低いが、アメリカでは大変な人気だという。

2002年には、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズとして「ロックの殿堂」入りを果たしている。サード・アルバム「破壊」(Damn the Torpedoes)は全米2位を記録、【ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム」500選(2020年改訂版)】において231位となっている。

ソロとしても、アルバム「フル・ムーン・フィーヴァー」が同500選で298位、「ワイルドフラワーズ」が214位、同アルバムからのシングル曲「ユー・ドント・ノウ・ハウ・イット・フィールズ」でグラミー賞「最優秀男性ロック・ボーカル・パフォーマンス賞」を受賞している。

最初にこの「破壊」を聴いた時には、(メロディは特記すべきところもなく、声も聴き惚れるようなものじゃない。)と思った。記憶に残るような楽曲もなく、アメリカの演歌的なアルバムで、それで売れたのだろうか。と思っていた。

いいあんばい

日本で人気が無いのも分かる。というか「売り」がないから売り出すのも難しい。メロディーに目新しいところはなく、ボーカルのトム・ペティはハンサムというよりは神経質そうな印象で、声もブルーノ・マーズのような艶も、カート・コバーンのような痺れるものでもない。

「破壊」のジャケットも、至って普通の表情でトム・ペティがギターを持っているだけという、ほんとに売る気があるのかという佇(たたず)まいである。CDも棚でほこりをかぶっていた(のちに売り飛ばしている)状態で、二度と聴くことはないと思っていた。

それが何の拍子か(Spotifyで流れてきた。どこぞのプレイリストに入っていたか、何かの繋がりで出てきたか。)「破壊」の1曲目「Refugee」が流れてきた。「かっこいい。こんなにかっこ良かったのか。声もいい。押さえた叫びというか何というか、そう、いい塩梅(あんばい)だ。」

ルイジアナ・レイン

引き続きアルバムを聴くと、これがまたいい。そしてアルバムの最後を飾る「ルイジアナ・レイン」が特に良かった。元はウェールズの葛城ユキ(ボヘミアンの人)ことボニー・タイラーに提供した曲のセルフカバーなのだが、断然、トム・ペティのがいい。

私は先にボニー・タイラー版を聴いたことがあって、それはそれで女性版ロッド・スチュワートと言われた彼女のハスキー(かつパワフル)ボイス版もいいのだが、少し押しつけがましい感もあって、雨が蒸発してしまう気分になる。

トム・ペティの声の、そぼ降る雨感がアルバムのラストに相応しく、アルバムを通して聴いた時の充足感が半端ない。雨でずぶ濡れになっているのに、それが心地よく、明日から頑張ろうという気持ちになれる。ほんとに、一時期はこればかり聴いていた。

そして、今は「フル・ムーン・フィーヴァー」からの「フリー・フォーリン」ばかり聴いている。なんか、いいんだよなぁ。いい絵もそうだけど、理由も言葉もいらない。なんか、いいんだよ。歳いって分かったような気がする。歳を取るのも悪くない。

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