人気の漫画
「ザ・ファブル」は「週刊ヤングマガジン」で2014年から連載された漫画で、シリーズ累計部数は3000万部を超える(2026年4月現在)人気の漫画である。岡田准一主演で実写映画化が2回、さらにアニメ化もされており、一般的な知名度もかなり高い。
私が最初、本作に触れたのはいわゆる「マンガアプリ」上で何話か無料で読んだのが初めだが、その時の印象は「設定も細かい描写も面白い。」というもので、いつかきっちり全巻読みたいと思っていた。そもそも私が「見た目は腑抜けだが実は強い」という設定が好きな上、さらにそいつが「1年間普通の生活を送る」という設定がいい。
とここで、おおまかなあらすじというか本作の設定を紹介する。【短時間で確実に依頼を遂行し、そして痕跡を一切残さない裏社会で「ファブル(寓話の意)」と呼ばれる正体不明の殺し屋がいる。組織は彼に(動きすぎた)として「佐藤明(さとうあきら)として1年間、誰も殺さずに一般人として平和に暮らせ」という指示を与える。】
よくもまあ、こんな設定を思いついたと思う。最強だった男とか、昔暗殺者だったとか、そういう人間が足を洗って余生を送るなんていうのはよくあるが、「1年間」というのが良い。ただ、それは単に「期間を定めただけ」だけのものでもあるのだが、例の「100日後に死ぬワニ」と同じで日にちが設定されただけでこんなにも面白くなるとは。
とはいっても、その設定が作品の全てであったり面白くしている原因かというとそうではない。とにかく人物の造形や描写がいい。出てくる人物がみんな「あまりに魅力的」で何故か「嫌悪感がない」。もちろん、裏社会の話であり簡単に人を殺めたりするし、やっていることは酷いのだが、人として筋が通っているというか憎めない。
印象に残った場面
最初のほうはアキラが「弱いフリ」をするコミカルな場面と、「実は超絶に強い」というシリアスな場面が交錯し、ワザと負ける面白さと実力を出した時の爽快さがたまらない。ただ、コミカル過ぎるとリアルさが無くなるし、シリアス過ぎると血生臭くなるところ、ギリギリのラインで留まっているところがいい。
しばらくの間はその路線で行くのかと思っていると、早いうちに身を預かるヤクザの若頭「海老原」がハンパものを躊躇なく撃ったり、アキラの頭に拳銃をつけて亡き者にしようとする場面が出てくるのも驚いた。この海老原という男が最初は気にくわなかったが・・・
この海老原の(本質的な是非はともかく)「一般人を巻き込まない」「散歩するように人を殺す奴は認めない」というヤクザとしての矜持と、殺し屋としてのアキラ(ファブル)の「あくまで仕事としての殺し」「人殺しをしたいわけじゃない」という、ありそうで無かった対峙の場面はすごい迫力だった。
海老原の「命をなんやと思っている」という問いかけに対して、アキラ(ファブル)が答える場面は本当にしびれた。などと言ってみたが、それもこの漫画の魅力のほんの一端であり、私はこの漫画の本質はギャグだと思っている。そもそも、私は教訓や生き方を求めてマンガや小説は読まない。面白いから読むのだ。
その面白いには「笑える」「爽快」「ワクワク」など種類はたくさんあるが、「ザ・ファブル」で最も勝っているのは「ギャグ」だと思っているし、だからこそ考えさせられる部分や問題提起のようなものが、頭や心にスッと入ってくるのだと思う。
評価と採点
しかし、なんといっても「ザ・ファブル」の魅力は主人公である佐藤明(ファブル)のキャラクターに尽きる。人間離れした超絶能力とそれに反するようなポンコツぶりというあたりは、昔から一定数あるキャラクターの類型であるが、その振れ幅の大きさと異質さはファブルが最大だろう。
私は今回第一部を読了したところで、第二部以降は読んでもいないし内容も良く知らないのだが、佐藤明(ファブル)が主人公である限りは楽しく読めるだろう。もちろん、いずれ読むつもりである。が、まずは第一部をもう一回読んでみようと思う。
では採点をしよう。採点は93点。かなり100点に近い評価なのだが、最後の争いあたりがちょっと人間関係が分かりにくかった。ただ、それは私の読み手としても力不足もあるのだろうから、これは2回目の読了時には違う印象になっているはず。一度読んでいると、人間関係が分かりやすく読みやすいから。
この作者の漫画はこれが始めてだったが、そもそも南勝久作品はこの「ザ・ファブル」以外には「ナニワトモアレ」という、デビュー作しかないようである。その「ナニワトモアレ」というのも何となく聞いたことがあるのだが、ちょっと敬遠していた。それは、基本的にヤンキーとかヤクザの出てくる漫画を私が好きでないからだ。
だが、この「ザ・ファブル」を読んで南勝久にも興味が湧いているし、ヤクザやヤンキー漫画への耐性もついたように思う。よって、ほどなく「ナニワトモアレ」またはその時はまた感想を書くことにしたい。


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