かわぐちかいじ
かわぐちかいじと言えば、「沈黙の艦隊」をはじめとするヒット作をいくつも世に出している人気漫画家であるが、私が最初に彼の作品に触れたのは「はっぽうやぶれ」という麻雀漫画だった。なお「沈黙の艦隊」は掛け値無しに面白い作品なので、未読の方にはお勧めする。
「はっぽうやぶれ」は、いかにもかわぐちかいじという作品で、これも機会があれば読んでみてほしい。麻雀を題材としている分、ルールなどを知らない人はとっつきにくいかもしれないが、私は碁を打てないが「ヒカルの碁」は好きだし、デスノートも使ったことがないが、「death note」も(エルが死ぬところまでは)何度も読んだほど好きだ。
さて、そのかわぐちかいじの描いた「僕はビートルズ」だが、原作がある。MANGA OPEN というコンテストで大賞をとったもので、「藤井哲夫」が書いたものである。その審査員を務めていたかわぐちかいじ氏が選考会でかなり推したということなので、そのあたりの事情から作画をすることになったようだ。
僕はビートルズのあらすじ
さきにあらすじを書いておくと、ビートルズのコピーバンド「ファブ・フォー」のメンバー4人が、本家ビートルズがデビューする前年にタイムスリップする。そしてその時代でビートルズの曲を自分たちのオリジナルとして発表する。というもの。バンドが売れて成功するという話に始まり、オリジナリティとは?創作とは?という話になっていく。
コピーをオリジナルとして発表する苦悩がありつつも、ビートルズファンだったメンバーは、これに刺激されて本家ビートルズが新たな曲をつくるはずだと、それを楽しみにする。コピーバンドの俺たちが奏でるビートルズの曲と、本家ビートルズの新曲との争いになるんだ…と聞いただけでも確かにワクワクする話である。
さて、ビートルズというグループについては、いまさら説明するまでもないが、リアルタイムで全世界を熱狂させたのは当然として、解散から50年を経ても未だその音楽は色褪せていない偉大なバンドである。私は言うまでもなくリアルタイムでは聴いておらず、まとめて追っかけた世代なのだが、アルバム群のクオリティの高さは驚愕でしかない。
初期の作品は、当時の熱狂が伝わってくるほど新鮮で心を揺さぶる。この時期の活躍だけをもってしても歴史に残るバンドであったに違いないが、ラバーソウル、リボルバーあたりからの急激な音楽性の上昇する。この成長力がまた尋常ではない。そして、ついには Sgt.Peppers というロックを超えた歴史的名盤を出す。
アビー・ロードの衝撃
ここまでの活躍でも凄いのだが、最後に究極の名盤を発表する。そう、アビー・ロードである。初めて聴いた時の衝撃は忘れない。一般の人はビートルズと言えば初期のシングルを思い出すことが多いだろう。抱きしめたい、ラブ・ミー・ドゥ…初期にもいくらでも名曲がある。さらには、超名曲のイエスタディや誰もが聞いたことのあるヘルプ!などもある。しかし、曲単位ではなくアルバムを聴いてほしい。特に「アビー・ロード」は是非聴いてほしい。
初期のシングル、 Sgt.Peppers 、アビー・ロード、どれか一つだけでも世に出していただけで歴史的バンドになり得たのが、全部、同じバンドが出しているという奇跡。リアルタイムで聴いていた人が本当に羨ましい。かわぐちかいじ氏はデビューした時から大好きでと言っているので、リアルタイムで聴いていたのだろう。
ゆえに、ビートルズという題材には熱い思いがあったはずで、それは絵にも表れている。後追いで聴いた私でさえ、作中のバンド「ファブ・フォー」が出すアルバムの選曲だけで興奮する。ちなみに、もし私なら史実と同じ順で曲を出してたろうなと思った。(Sgt.Peppers を1曲単独でいれるのはちょっとアカンと思うけど、どうでしょう。)
感想と採点
なので、普通の漫画のように「次はどうなるんやろ」と単純に思うのではなく、「えっそうするんや。」と何か自分ならこうするというものとの比較をしながら能動的に読んだ珍しい漫画だった。ただ、私はギターが弾けないので、やるならドラムのリンゴになるのだが、もちろん、あんなに上手くは叩けないので、彼らのようにはいかないが。
全10巻を一気読みした。面白かったが、もうちょっと深く掘り下げてほしかった。結局、ビートルズは元の世界と同じような活躍、経緯を辿ったとなっているが、漫画の中の経緯からするとアビー・ロードには「サムシング」がないことになる(ファブ・フォーが先に自分たちの曲として発表済)し、Sgt.Peppers も発表されていないかもしれないと思うのだが。
それと、あくまでオリジナルのこだわるレイが、案外あっさりコピーバンドに戻るのもちょっと軽いというか残念だった。あと、これを言ってはおしまいかもしれないが、メンバーの一人が誘拐されるくだりは要らなかったような気がする。ん~これは逆にビートルズの名前だけを知っているという人のほうが面白く読めるのかも…採点する。44点。


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