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伊坂幸太郎の「重力ピエロ」を読んだ。

小説

伊坂幸太郎

「軽妙な会話とウィットに富んだユーモアと張り巡らされた伏線が特徴。作品はエンターテインメント性に優れ、読者を驚かせる要素が詰まっている。初心者にも読みやすく、またコアファンにも愛される作風である。」というのが、【伊坂幸太郎】で検索した時にAIだか何だかが要約した(ネットから拾ってきた)結果である。

この要約の信頼性はよく分からないが、私が描く作者像もほぼそのとおりで、なかでも「軽妙な会話とエンターテインメント性」というあたりが特に私が抱く作者像に近い。とはいっても、実は氏の作品は「ゴールデンスランバー」と、この「重力ピエロ」の二作品しか読んでいない。

伊坂幸太郎の名前は知っていたし、その作品を読んでみようと思ったことはあったのだが、この「軽妙な会話とエンターテインメント性」というイメージや映画化・舞台化・漫画家というメディアミックスが多いとことから、何かそこに「赤川次郎」臭を感じてしまい、「軽薄」だとか「内容が薄い」と勝手に思ってしまい避けていたのだ。

なお、赤川次郎も今のところ一冊も読んでいない。ただ、断っておくが私は自分自身がまず軽薄短小なうえ、他人にも自分にも甘いカスのような人間で、軽薄で低俗な漫画やテレビも大好きだし、youtubeでくだらない動画(古銭をピカピカにするような動画とか By ドンデコルテ)で無駄な時間を使うことも日常だ。

それで、(ひょっとして、アビーロードの?)という思いから「ゴールデンスランバー」という題名に釣られて読んだのが、初めての伊坂幸太郎作品だったのだが、これはもう手放しで面白かった。2008年の本屋大賞などを受賞し、「このミステリーがすごい!」の2009年版で1位になっただけはある。

重力ピエロ

いまのところやはり「ゴールデンスランバー」が代表作という伊坂幸太郎だが、次に何を読もうかと思っているうちに何か別のものに気が向いたのか、ずっとそのままになっていたところ、別のルート(大好きな youtube のショート動画で流れてきた【おススメの10冊】に入っていた。)でこの「重力ピエロ」が登場し、今回読んでみることにした。もちろん、期待値はMAXである。

ちなみに「重力ピエロ」も「このミステリーがすごい!」の2004年版で3位に入っているし、直木賞の候補にもなっていて、この「重力ピエロ」が伊坂幸太郎が広く認知された出世作のようだ。なお、直木賞は「影響力の高さゆえに環境が変化する可能性を憂慮」して選考対象となることを辞退しているという。

【あらすじ】仙台の街で起こる連続放火事件。放火現場の近くには必ず奇妙な落書き(スプレーによるグラフィティアート)が描かれていた。泉水と春の兄弟は、事件に興味を持ち謎解きに乗り出す。落書きと放火の間にある規則性は「遺伝子」なのではないか・・・そしてその犯人は。

登場人物それぞれのキャラクターや会話は、それだけでも楽しくそして含蓄があり楽しく読むことができる。ストーリー的には人物の葛藤を描いている部分と謎解き部分が半々と言った感じ。ミステリ的な観点からは誰がやった、何故やったという部分も謎解きの部分もあるが、どちらも「薄い」というか、やはりこれはミステリでは無いように思う。

全体の印象は、ひとつひとつの場面が短く、だからといって散漫という程ではないのだが、何かこれという主軸が見つけられなかったので、ちょっとぼんやりしていた。ただ、これは私に好みの問題もあるのだろう。やっぱり本を読んだり漫画を映画を観た時は「大笑い」したり「大泣き」したり、スカッとしたい。それが無かったのはちょっと惜しい。

モヤモヤ

江戸時代の話なのによく見ると空に飛行機が飛んでるとか、映画なんかで良く言及される時代考証というのがある。細かいのになると「そもそもこの時代の人間にしては血色が良すぎる」なんてのもあって、気にする人はそれが気になって物語に入り込めないなんていうのもよく聞く話である。

後はジョジョに代表される勢い漫画などでも「スタンドはスタンドでしか倒せないはずじゃ・・・」とか、「ジョルノの(感覚だけが暴走する)能力ってどうなった?」などのハテナが多数あり、言われてみれば不思議なのだが、私はリアルタイムでは全く気にならない。

(以下「ネタバレ」あり。内容に踏み込んでいるので本作を未読の方は注意してください。)

しかし、この「重力ピエロ」の本筋部分である(暴行により妊娠してしまった子を産む。そしてそれを隠さない。)というところが、私には許せないというか(そんなこと有り得ないだろう。)という思いがどうしても残ってしまい、「春」(種違いの弟の方)の存在が認められないし、それを許した両親にも共感ができない。

そうなると、両親と「春」の言う事やる事が全て(認められず)、しらじらしく思えてしまう。なお、私自身に(周りを含めて)何かそのような事態が起きたからトラウマになっている訳ではない。やっぱり暴行そのものも嫌悪するし、それで宿った子を産むというのはあり得ない。

ただ、それでも産むことにしたというあたりを、もっと深く書いておれば納得はできなくとも共感はできたかもしれない。なんだかそこがサラッとしていて許せないしやるせない。なので、読み続けはしたが、ずっとモヤモヤしたままだった。そういえば、兄や父がストーカーをなんとなく許しちゃっているのもぶっちゃけどうかと思う。ただ、作品的には良い作品だとは思った。しかし、私の採点は45点。正直、良い作品ではあるが、これを読んで面白かったという人はいるのだろうかと思った。

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