読み応えあり
作者も題名も知らない本を読んでみようと手に取って読んだ、大門剛明(だいもんたけあき)の「死刑評決」が思いのほか面白かったので、今度は作者の代表作を読んでみようと思い、調べてみると「雪冤」と「完全無罪」の二つが評価が高そうだったので、そのうち「完全無罪」を読んでみた。
「死刑評決」を読んだ
最初に読んだ「死刑評決」も死刑と冤罪がテーマとなっていたが、そこに裁判員制度をからめたものとなっていた。この「完全無罪」も冤罪がテーマであるが、死刑ではなく、また違法捜査と「冤罪になっても完全無罪ではない」といった要素が主題になっている。
そもそも私は、死刑であったり違法捜査(特に刑事による拷問)には興味があり、多少文献は読んでいるので、問題点について言及している部分については、ある程度理解できて共感もできたから、それだけでも読み応えは十分。
あっという間に読了
さらには、本当に冤罪なのか、実は冤罪でないのかとドキドキする部分や、誰かに襲われはしないかとのスリル、そして意外な展開もあり、ミステリの部分でも堪能できる。あっという間に読んでしまった。
先に読んだ「死刑評決」の前の話であり、主要登場人物も同じだが、意外と前後していても大丈夫だった。逆に言うと、人物像がまだぼやけていると言えるから、もう少し登場人物の深い描写はあってもいいような気がする。
裏がありそうなボス(真山)、心に傷を抱えた女性(松岡)、その女性を見守る男性(熊)という、まあ、ありがちと言えばありがちな人物たちだが、ありがちなだけに、それぞれ読み手が作っているプロトタイプはあると思う。
そこに描写を加え肉付けがなされることで、より魅力的な唯一無二のキャラクターができるのだと思う。そして時には思った通りの行動をして爽快になったり、時に意外な行動をしてまた人物像が変わるのにワクワクしたり。
ちょっとご都合主義?
他の登場人物についても、そのあたりの描写があまりないので、少し行動に対する動機がつかめないため、少し感情移入の度合いが薄くなる。ここはミステリにとっては大事な部分で、いくらトリックやストーリーが素晴らしくとも、行動に対する「動機」がぼやけていては、全て茶番に思えてしまう。
本作においても、登場人物の行動の動機は書かれてはいるのだが、理由となるしっくりくるエピソードが少ないため、ちょっとご都合主義的な進め方に感じてしまうところがないでもない。
と少し厳しいことも書いてみたが、私は最近では一番面白かった。点数をつけるなら88点。今、作者の別の作品を読もうとしているところである。続けて読んでいきたい作家だし、どこかで爆発しそうな気もするので、期待したい。



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