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池井戸潤の「銀翼のイカロス」を読んだ

小説

池井戸潤

池井戸潤という作家を知ったのは、やはりドラマ「半沢直樹」から。私は基本的にドラマは観ないのだが、2013年版と言われる最初のドラマの第7話か第8話くらいを、たまたまつけてたテレビでやってたのに魅入ってしまい、最初に遡って(嫁さんが録画してたやつ)全部観てハマってしまった。

2020年版は、基本的に全ての用事のなかで最優先と位置付けて時間を空け、毎週リアルタイムで観ていた。どちらも面白かったが、やっぱり初回の半沢と大和田の対決、そして大和田の土下座、これが私のクライマックスだった。大和田の土下座は安田大サーカスの団長が真似していたが、私はその真似の真似を誰も見ていないところでひとり、よくやっていた。

その後、なんとなく小説の方を読んでみようと思い、これもドラマ化されてヒットした「下町ロケット」と「空飛ぶタイヤ」(こちらは映画化も)を読んだ。ちなみに、どちらの作品もドラマも映画も観ていない。また、半沢直樹以外のテレビドラマは「VIVANT」しか観ていない。ただ言っておくが、堺雅人のファンという訳ではない。

小説「下町ロケット」と「空飛ぶタイヤ」は、どっちも面白かった。私は冒険小説や推理小説も好きだが、Wikipediaなんかを読むのも大好きなように、ドラマ性や人間を描いていないただ事実だけをつらつら書いてある文章も好きなので、「銀行ミステリ」とか「企業小説」とカテゴライズされることの多い池井戸作品には合っているのかもしれない。

ただ、本人は当初「銀行ミステリ」とのレッテルを貼られ読み手の幅が狭くなっていることから、エンタメとして読んでもらうため「人間を描く」ことにシフトしていくことを意識しているようで、2006年の「空飛ぶタイヤ」で(文学性に乏しい)と落選した直木賞を、2011年の「下町ロケット」で見事受賞している。

登場人物のイメージ

「銀翼のイカロス」はいわゆる「半沢直樹」シリーズの4作目であり、下町ロケットで直木賞を受賞した後の2014年の作品ということで、銀行ミステリの部分と人間を描いた部分のバランスが良く、パズル的にもドラマ的にも楽しく読めた。ただ、ドラマを観た後なので内容をトレースしながらの読書であって、余計に読みやすくスッと入ってきたのだろう。

ちなみに、これは敢えて4作目から読んでみたという訳ではなく、Youtubeのショート動画で「おススメの10冊」とかいうのに、これが入っていたからという単純な理由である。なお、これからそのおススメの10冊で未だ読んでいないものを順次読んでいく予定となっている。

ドラマを観ない人間なので、ドラマを先に観てから原作を読むというのは初めてのことだったが、完全に登場人物は顔も声もドラマそのままで頭の中に浮かんでくる。じゃあ、小説が最初の場合はどうだったかというと、登場人物の姿形や声色は自分で作り上げているのかというと、私の場合「特に形や声はイメージしていない。」のだが、これは普通なのだろうか。

例えば、今また別の小説を読んでいるのだが、その登場人物を思い浮かべた時「姿かたち」や「声」は浮かんでこずに、「やせ型」「長髪」「陰気」などというキーワードだけがぼんやりと浮かんできて、ひとつの人物像ができあがる。仮に絵で書いてみろと言われれば書けないこともないが、それはイチからの作業となる。

将棋の藤井聡太名人が、多くの棋士が「盤面を思い浮かべ、そこで駒を動かす」のとは違い「3四銀、同金、8九飛・・・」という棋譜だけで考えているというは話を聞いたことがあるが、(レベルは天と地ほど違うけど)それと同じだろうか。ちなみに、ウチの嫁さんは計算するのに頭の中のソロバンを弾くといっていたが、ソロバン3級(笑)の私だがやはり文字で計算している。3+8=11という文字だけが浮かぶのだ。

銀翼のイカロス

さて、肝心な書評っぽいところだが、先に採点をしておくと90点。プロット的には、大御所の政治家による錬金術とか、その不正に関与する銀行の闇とか、特に目新しいものはないが、書類の保管方法や隠し方などといった、それを暴くプロセスが流石に銀行業に詳しい作者だけあってリアルで良かった。

人間の描き方については、主要人物の半沢や渡真利、中野渡頭取など主要な人物は既に人物像が出来上がっていることから入りやすかったのものあるが、それら人物の動きや思いは理解も共感もできて良かった。敵のほうも分かりやすい人物(単純でベタと言えばそれまでだが)が多く、善と悪もはっきりしていてかつ勧善懲悪で終わるのもいい。

特に私がそうなのかもしれないが、ワンパターンだからといって捻られるよりは、結局、勧善懲悪、ハッピーエンドがいい。ちなみに、怖がるというのが目的の「ホラー」は私には合わない。笑う、スッキリする、そしてたまに泣く、そんなために小説を読んだり映画を観たりしたい。怖がるためにわざわざ映画館に行く人の気が知れない。

あと、私の記憶が確かならば「倍返しだ」のセリフは小説のなかでたったの1回しか言っていない。ドラマではもっと言っていたような、それも「倍返し」「10倍返し」と増えて行って、最後は「1,000倍返し」まで行っていたような気がするが・・・記憶違いだろうか。

今のところ数冊しか読んでいないが、池井戸潤は好きな作家になりそうだ。他の半沢直樹シリーズも、それ以外の作品も読んでみようと思う。

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