はじめての大門剛明
またしても、図書館で予備知識なしで適当に取った本を読んでみることにした。それが大門剛明(だいもん たけあき)の「死刑評決」である。著者は恥ずかしながら聞いたことはなく、題名もやはり初耳だった。ただ、題名からして司法ものだろうというのは分かる。
私は、個人的に死刑制度であったり「被害者が複数」などという死刑の選択基準のようなものとか、死刑になった凶悪事件といったものには興味があり、Wikipediaや「日本事件史」などというサイトを結構な数見ており、「死刑評決」というタイトルからすでに期待値は高くなっていた。
裁判員制度
また帯(うちの近所の図書館は、たまに本の帯をつけてくれている。)には「裁判員が犯人!?」とデカデカと書いてあることから、裁判員がらみの話のようであり、これも興味深い。ただ、実際にストーリーでは裁判員が被告人として裁かれるのだが、それは端から無罪だと明かされているので、この謳(うた)い文句にはちょっと違和感がある。
市民感覚を司法にという触れ込みで鳴り物入りで導入された裁判員制度であるが、その裁判員裁判で一審の地裁で死刑とされた事件が、控訴されたのち二審の高裁でいわゆる職業裁判官だけの裁判によって無期懲役となることが繰り返されている。
その理由は、死刑の基準となった最高裁判例に従ったためであったり、ほかの死刑判決が出た事件との均衡であったりというものだが、「そこに市民感覚を取り入れる」ために裁判員制度があるはずなのに、職業裁判官だけの判断で今までどおりの基準で死刑か無期懲役かを決めるなら、裁判員制度など要らないと思うのだが。
少しのモヤモヤ感
とまあ、私の意見は置いておき、本に戻ろう。まずは、読みやすくわかりやすい。そして展開も早い。人物の描写もうまく、登場人物の人となりもイメージしやすい。ただ、発端となる死刑判決を受けた少年(犯行当時19歳)の描写が少なく、ここはもう少し書いてほしかった。
ここで物語に少し触れると「裁判員裁判で死刑の評決を受けた、犯行当時19歳の死刑囚。再審をしようとした矢先、刑が執行される。その直後、評決に加わった裁判員が容疑者となる事件が発生する。死刑の判断は間違っていなかったのか、評決と事件に関係があるのか…」といったところ。
先に触れたように、この「評決に加わった裁判員が容疑者となる事件」であるが、その裁判員が犯行をおかしていないのは小説の中で明かされているところ、やはり鍵となるのは発端となった少年が死刑となった最初の事件なのだから、その事件を起こした経緯や少年の心の動きをもう少し掘り下げてほしかった。
また、少しあり得ないような偶然が起こっていると思われるところや、後の事件の犯人の行動が少し不合理というか「この人はこんなことしないのでは?」と思われる部分があり、少しモヤっとするところはあった。
落ち着いた良作
しかし、私の待ち望んだ重厚で落ち着いた物語であり、かつ驚くような展開もあり、次々とページをめくりたくなる良作である。裁判員制度や死刑制度の問題点についても言及しており、そもそも人に人が裁けるのかという根源的な問題についても考えさせられる。
著者の大門剛明には、他にも「雪冤」や「罪火」といったテレビドラマ化された有名な作品や、「完全無罪」という、この「死刑評決」に至る前の物語があり、その「完全無罪」が今のところ代表作のようで、これは是非とも読んでみたいと思った。
私の好みである司法ものということもあり、採点は高くつけたい。85点。何かもうひとつあればもっと点は高くなるし、この作家は期待してもいい。強烈な個性を持つ主人公でもいれば、化けるような気がする。まずは、「完全無罪」を読んでみよう。


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