アラレちゃん
いまさら説明するまでもないが、鳥山明は日本を代表する漫画家であり、世界に日本の「MANGA」を広めた第一人者である。「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」という大ヒット漫画の作者であって、また「ドラゴンクエスト」シリーズのキャラクターをデザインしたデザイナーでもある。
漫画家としてのデビューは1978年、週刊少年ジャンプでの「ワンダーアイランド」という読み切りだった。当時9歳だった私は、既にジャンプを毎週読んでおり(兄が買ったものか、近所の誰か買ったやつだと思う)ストーリーはさておき、やはりその絵柄に惹かれたのを覚えている。
そしてほどなく(1980年)始まった「Dr.スランプ」は、題名のとおり当初はアラレちゃんではなくDr.スランプこと則巻千兵衛が主人公だったが、担当編集者の鳥嶋和彦の強い意向によりアラレちゃんを主人公として展開し、それが故にか大ヒット漫画となる。
私は連載初回からずっと週刊で読んでいたが、最初のうちはアラレちゃんの等身も人並みの5とか6等身だったのが、どんどん小さくなって最後はほぼ2等身になっていったのをよく覚えている。性格の方も少し大人びてミステリアスな感じだったのが、5歳児レベルまで落ちてしまい、ウンチをつつくまでになってしまった。
しかし、面白ければどうでもいいので、私は登場人物のみかけや性格が変わるのは気にしない。それでも、小林玉美(ザ・ロック)と間田敏和(サーフィス)の変わりぶりはいくらなんでも酷いと思う。(もちろん、それがいいんだが。)もちろん、アラレちゃんもこれで良かったのだと思う。
面白い!
昔の読んだ漫画を今になって読むと、思い出補正もあるのだろうが、(もっと面白かったよな)とか(もっと凄いと思ったけどそうでもないな)と思うことが多い。特に、ギャグ漫画系はそれが顕著だと思う。これは映画やテレビ番組でも同じことで、泣けるものは泣けるし感心するものは感心するが、当時面白かったものがつまらないという事が多い。特に当時突き抜けて面白ければ面白かったものほど、落差がひどい。
例えば、内崎まさとしの「らんぽう」という漫画。「Dr.スランプ」の2年前(1978年)に「週刊少年チャンピオン」で連載が開始されたギャグマンガで、1987年まで連載され単行本も37巻まで出ているから、当時の人気が偲ばれる。私も大好きで読んでいたし面白かった記憶があるが、少し前に読んでみたがクスリともしなかった。
同時期に連載されていた「1・2のアッホ!!」(コンタロウ)や「すすめ!!パイレーツ」(江口寿史)も、最近チラッと読んだがつまらないとまでは言わないが、懐かしいだけでありやはり面白くはなかった。ただし、「がきデカ」(山上たつひこ)と「マカロニほうれん荘」(鴨川つばめ)の最初の頃は、今読んでも面白い。
そして、「Dr.スランプ」がどうだったかと言うと、これは掛け値なしに面白かった!やはりメガヒットするだけはある。絵が上手いのはもはや言うまでもないが、何しろテンポがいい。最近の漫才に匹敵する店舗の良さで、ギャグそのものの切れ味は鋭いとは言えないのだが、登場人物の掛け合いが楽しい。
私が読んだのは単行本第2巻であり、まだまだエログロもあるから余計に面白いと感じたのかもしれない。さすがに、どんどん時代が変わり低年齢化した後期はどうだったのだろうか。第2巻では「ブビビンマン」という、スッパマンのいとこが登場する。ハエ型の宇宙人だが、これがウンチが好物でなんと「ウンチを食べて美味いと言う」描写があるのだが、今なら悲鳴の上がる炎上案件だろう。
単行本は全18巻
「Dr.スランプ」は1980年から1984年までという短い間の連載で、単行本も全18巻という短さ。いや、決して短くはないのだろうが、これだけの大ヒット漫画がたったの全18巻とは今となっては驚きの短さだ。もちろん編集部は続けて欲しかったのだろうが、「3か月後に新連載を始めるのなら終わってもいい」と言われて1984年8月に連載終了になったという。
そして本当に3か月後の1984年11月に「ドラゴンボール」の連載が開始されたというから、人気漫画家も大変だと思う。この「ドラゴンボール」も当初は人気投票はずっと下位だったが、編集者(Dr.マシリトのモデル鳥嶋)と話し合い「冒険ロマン」から「格闘大会」(天下一武道会)へ向けて修行して勝つという明快なストーリーに変えて、人気が急上昇したという。
「Dr.スランプ」の時も主人公をアラレちゃんにするなど、編集部(編集者)の意向による変化により人気が上昇しており、これは鳥山明が自身の描きたいものに拘らず、ストーリーなどを変更することを厭わない性格だったことが幸いしている。これだけの人気漫画家となると、(自分の描きたいものを描く)とか(自身の世界を表現したい)などと言い出しそうなものだが。
これは「Dr.スランプ」だったか「ドラゴンボール」の時かは忘れたが(多分、ゲーセンのくだりから「Dr.スランプ」時代かと)、原稿が「ボツ」となり描き直しが必要なところ、「ワシ(鳥山明)はゲーセンで遊んでしまった!」のため、しばらくしてまた最初と同じ原稿を送ったら、編集者(鳥嶋)が「まあまあだな。」といって採用されたという話があった。
まあ、漫画に対する思い入れがその程度なのが却って名作を生んだのだと思う。おおよそ漫画家の(描きたいもの)と読者の(読みたいもの)は違うことが多いから。それより、このボツ原稿を再度そのまま送ったという話、今だったら漫画家に対しては「最悪!」「プライドないのか。」、編集者には「読んでないのか」「いい加減過ぎるだろ」などという誹謗中傷がなされ大炎上しそうだ。変な世の中である。


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