ピンとこなかった「半落ち」
またしても読み止し(よみさし)のレビュー的なものであるが、そもそもこの横山秀夫「第三の時効」を読んだのは、随分前に読んだ「半落ち」が「良い小説だし、直ぐに読んでしまうほど没入したが何かモヤモヤした。」記憶があったからだ。
「半落ち」のオチがちょっと私にはピンとこなかったことから、作者の全体的な評価が私の中で落ちてしまっているが、その印象からかなり実力のある(読ませる)ことが分かるので、他の作品で(おそらく急上昇するであろう)再評価をしてみたくなったからだ。
横山秀夫は「64(ロクヨン)」というのが評判がいい(このミスと文春の1位)ようで、それを借りようかと思ったら、上下巻の(上)しかなく、断念した。
上下巻と言えば、昔のはなしだが、上下巻を一遍に借りて読んだところ面白く読めたので満足して返しにいったら、(中)巻を発見したということがあった。漫画でも久しぶりに読んでみようと読み直したら、途中の2巻分くらい全く知らない話があり、どうも飛ばして読んでいたようだということもあった。そんなもんだ。
「第三の時効」がいい!
そして借りた「第三の時効」だが、これは6話からなる短編集で、刑事を主人公にした「F県警強行犯シリーズ」の第1作目だという。まだ読んでいる途中だから何とも言えないが、捜査第一課強行犯捜査一係の「朽木」、二係の「楠見」、そして三係の「村瀬」のキャラがいい。
「理詰め」の朽木、「冷血」の楠見、「閃き」の村瀬と、三者三様の班長だが、みなキャラクターが立っており、それぞれ魅力的で、またみなが上司(田畑課長や尾関部長)を上司とも思っていないし、しかも有能というがたまらない。
今のところ、第1話「沈黙のアリバイ」、第2話「第三の時効」、第3話「囚人のジレンマ」を読了し、第4話「密室の抜け穴」を読んでいるところだが、私は特に第2話「第三の時効」が良かった。
なるほどと思わせる「第三の時効」と、それにかかわるもう一つの意外性。短編だから当然とはいえ早い展開、伏線の回収も納得できるし、気持ちが良い。最後は思わず「えっ」と言わせる意外性。
他の話もレベルは高く、舞台設定、登場人物、展開、オチ、それらの描写もうまい。それぞれ重厚な長編が書けるレベルの話である。やはり「半落ち」では少しオチが納得いかずモヤモヤしたが、横山秀夫はいい。
落選した「半落ち」
ただ、ここでその「半落ち」について少し。この作品は直木賞の候補だったが、選考委員の北方謙三が、小説中の重要な要素について「現実ではありえない」との回答を関係機関から得たことから、選考会でその旨を報告し、結果、現実味に欠けるとして批判され落選したという経緯がある。
実は私もその点がモヤモヤした原因だった。小説の確信部分でありネタバレになるので、譬(たと)えていうと「オチが(実はその3日間、彼女は海外に逃げていたのだ。)という話があったとする。でも、その彼女は海外には行ったことが無いことがハッキリしている場合」
という時、どうしても「パスポートは?」というのが気にかかる。3日じゃ取れないだろうとか、海外に行ったことが無いのが嘘だったのかとか、偽造したのかとか、そのあたりが腑に落ちないため、モヤモヤが残るという感じだ。
「半落ち」の参考となるレビュー
他にも「半落ち」については次のようなレビューもあった。おおむね同意する。
「ジェットコースターに乗るようなミステリーではない」
「オチが自分の中ではそれだけのことで?と感じた」
「構成や文書はどんどん引き込まれるものですごい作品を読んだと感じた。しかし、
それ故に読後反芻する度に呑み込めない部分が現れてきた」
さておいて「第三の時効」に戻ると、これは名作にして快作で、何にしても面白い。「64」も読んでみたいが、まずはさっき借りた「クライマーズ・ハイ」を「第三の時効」の読後に読もう。正直、かなり楽しみだ。
では「第三の時効」の点数だが、今のところ90点!そして、これは読了後に落ちることはないと思う。


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