モーニングで連載
佐藤秀峰(さとう しゅうほう)の作による「ブラックジャックによろしく」を読んだ。2002年~2006年にかけて週刊モーニングで連載された作品である。モーニングは一時期毎週発売日に買って読んでいたのだが、目的が「パチンコ・ドンキホーテ(谷村ひとし)」のためだったからか、「ブラックジャックによろしく」をリアルタイムで読んでいた記憶がない。
モーニングと言えば、「島耕作シリーズ(弘兼 憲史)」「沈黙の艦隊(かわぐち かいじ)」「クッキングパパ(うえやま とち)」、そして私の大好きな漫画ベスト3に必ず入る超名作「ナニワ金融道」あたりが代表的な作品だが、他にも印象的な作品が多い。
「ああ播磨灘(さだやす圭)」
仮面を被って土俵入りする新横綱「播磨灘」、双葉山の69連勝を破る事と負けたら引退する事を宣言する。「ヒールの横綱」という現実にはなキャラ。朝青龍が活躍していた頃、いつもこの播磨灘のことを思い出していた。相撲好き、スポーツ漫画好きにおすすめ。ただ、ラストを覚えていない・・・また読んでみよう。
「えの素(榎本俊二)」
GOLDEN LUCKYの頃から大好きだった榎本俊二の代表作(?)「ロッパー」で検索するとよく分からない植木用の太枝切り挟が表示されるが、私にはゲロを吐く音にしか聞こえない。下ネタ、暴力、スカトロ・・・ごく一部の人間にしかウケない漫画に間違いない。トムブラウンがエログロ漫才をしたらこんな感じになる。
「ギャンブルレーサー(田中誠)」
競輪をする前から読んでいて面白いと思っていたが、競輪を覚えてから読んでみるとさらに面白く、また競輪の勉強にもなる。特にレース場面を扱い事が多くなった中盤あたりは競輪の教科書のような良いデキの漫画。ギャンブルを扱った漫画ということもあって、連載当初はクレームも多かったというが、個人的にはこういう漫画は増えてほしい。競馬ではなく馬券が中心の漫画とかね。
「ツヨシしっかりしなさい(永松潔)」
ゆるゆるの日常系漫画である。内容もだが、絵柄も即興で書いたようなフニャフニャの漫画で、ひとつのエピソードも覚えていないほど(私だけ?)漫画らしくバタバタと殺人が起こったり、大事故が起こったりしない安心できるマンガである。なんと、ドラマ化やアニメ化もされている。
ブラよろ
ブラックジャックによろしくのタイトルは、医療漫画の金字塔である「ブラック・ジャック(手塚治虫)」と、同じ手塚治虫の「ブッキラによろしく!」との合わせ技らしい。「ブラック・ジャック」は漫画好きでなくとも知っている超有名マンガだが、「ブッキラによろしく!」は漫画好き(手塚好き)の私も知らなかった。いつか読んでみよう。
私は紙の本を借りて読んでいるのだが(実は全13巻のうち第8巻までしか読んでいない。ただ、既に全巻を2回ほど読破して、今は3回目で8巻まで読んでいるところ。)、作者により全巻が無料で配信されており、2次利用も自由となっており、ソフト・オン・デマンドから「ブラックジャックによろしく」の2次創作物が出ているらしい。
この「ブラックジャックによろしく」の主人公「斉藤 英二郎」は、医療界の理不尽に抗い色々な騒動を巻き起こすのであるが、それはまるで作者である佐藤秀峰の分身でもあるかと思わせるくらい、佐藤秀峰も漫画界における理不尽を許さず、普通なら埋もれてしまう(闇に葬られる)出版社やテレビ局とのトラブルを公にし、行動を起こしている。
映画化されて大ヒットした「海猿」(原案 小森陽一、作者 佐藤秀峰)では、テレビ局(フジテレビ)のアポなしでの自宅への取材や関連書籍の無許可出版など度重なる不誠実な対応に怒り、版権の許諾を拒絶したことで作品は封印されているし、このブラよろでも「無断改変」など出版社(講談社)の作品に対する取り扱いに不信感が募り、続編は「新・ブラックジャックによろしく」として、小学館のビッグコミック・スピリッツでの連載となった。
漫画における作品や漫画家への仕打ちが酷いことは、「セクシー田中さん」の原作者である芦原妃名子さんの事件でも明らかになったように、今や誰もが知るところであるが、未だにその体質は変わらなく、作品に対する短絡的な改変などのぞんざいな取り扱いや、作者への圧力というものは今でもあるように思える。
作品の感想と評価
9巻まで読んだところであるが、最初の研修医編では「研修医の安すぎる給与と過労などの待遇」「自由診療となる交通事故だけを引き受け、儲けることだけを考えている病院」などの問題、第一外科編では「執刀医などに対する高額な謝礼」「無駄に費用のかかる延命処置による医療費の圧迫」などの問題を取り上げている。
続く第一内科編では、「医局(派閥)による差別」や「患者への対応より、医局の争いが優先される体質」などがテーマである。細かいところでは、「一般的には医者の数が多く大学病院なら安心と思いがちだが、医者が多い分手術をこなしている回数が少なく、医者の手術の腕はむしろ劣る」などという問題も提起している。
続く新生児編では不妊治療の現実や障害児の問題、治療したくても家族の同意が無い限り手術ができないという医者のジレンマ、続く小児科編では、小児科における赤字や人手不足による診療体制の問題に加えて、救急医療における受入拒否とそれに伴って起こる患者の死など、これらをかなりリアルに伝えている。
そして第四外科編、最後に精神科編(第9巻から最終巻である第13巻まで)と続き、「新・ブラックジャックによろしく」で移植編として全9巻が刊行されている。私が今回読んだのは第8巻までなので、第四外科編のところまでだが、第四外科編は、抗がん剤における遅い認可、抗がん剤そのものの是非、終末期医療における疼痛緩和と死生観などの重いテーマとなっている。
これでもかというほど多くの重く大きなテーマを取り上げ、かなり鋭く緻密で辛辣に描いており、繊細ながらも放埓な絵柄ともマッチして素晴らしい作品になっている。結局、主人公はこれらの医療界における理不尽を解決できてはいないが、何か納得させられる畳み方になっている。評価は92点。

